びんごトピックス  2002年6月1日号 
 
表紙写真


産学官の福山バイオビジネス交流会発足

バイオサイエンスに関して産学官がスクラムを組み、備後地域の産業創出、新製品開発を促す総合的な支援体制づくりを目指す「福山バイオビジネス交流会」を発足・運営するための委員会が五月二十三日、福山市東深津町の備後地域地場産業振興センターで開かれた。
委員会に集まったのは民間企業から天野実業(株)の青山幸治常務、池田糖化工業(株)の桑田和典執行役員、金光味噌(株)の金光邦彦社長、(株)グリーンテックの山岸善忠社長、(株)CAFラボラトリーズの大田博昭所長、(有)精興園の山手義彦社長、日本総合科学(株)の高田詔民常務、丸善製薬(株)の小川進総合研究所副本部長、ヤスハラケミカル(株)の吉岡利紘研究部長、(株)オガワエコノスの小川勲社長の十人。
官公関係から近畿中国四国農業研究センター、広島県立東部工業技術センター、福山市、府中市、新市町、神辺町、沼隈町、福山商工会議所、府中商工会議所、新市商工会、神辺町商工会、沼隈町商工会のトップまたは商工担当者十二人。
学界関係から福山大学の松浦史登生命工学部長、浅田浩二生命工学専攻長、壷井基夫生命工学科長、小巻利章応用生物科学科長、石田祐三郎海洋生物工学科長の五人。
交流会の委員は以上の二十七人に事務局を担当する備後地域地場産業振興センター(電話084・924・4510)の二人を加えた二十九人。またオブザーバーとして中国経済産業局と広島県から産業関係の担当者五人が加わる。
この日の第一回委員会で交流会の会長に福山大学の松浦史登学部長を決め、副会長に金光邦彦金光味噌(株)社長と羽原敏雄福山市商工労働部次長が就任した。
同交流会は目的に沿った研究会やシンポジウムを開催するほか、福山大学の利用方法の制度化、産官学連携の実用化技術の開発などに取り組む。またこれから立ち上げられる福山市創造活動推進協議会への参加も行う。
六月六日午後三時から福山大学で会長に就任した松浦学部長が記念講演を行い、旗揚げする予定。同委員会では広く会員を募集している。


尾道エフエム放送が10Wから20Wに強化

コミュニティ放送局「エフエムおのみち」を放送している尾道エフエム放送(株)(尾道市土堂二丁目3-23、宮地康隆社長)は六月一日から放送電波の周波数を十ワットから倍の二十ワットに変更、受信可能エリアを大きく広げる。
これを機に、送信するアンテナも御調郡向島町の高見山(標高二百八十三m)に変更、尾道市内の九三・五%にあたる三万四千百五十七世帯をカバーすると同時に、向島町内の全六千四百三十一世帯(これまでは九二・八%のカバー率)をカバー、これまで受信が難しかった沼隈郡沼隈町の四八・三%にあたる二千六十四世帯、同郡内海町の八二・六%にあたる千百四世帯でも「エフエムおのみち」が視聴可能となる。


三和鉄構建設が共同で二棟相次ぎ着工計画

総合建設業の三和鉄構建設(株)(尾道市高須町5267、資本金四千九百五十万円、中島秀晴社長)は、福山市と尾道市に相次いで十五階建ての高層マンション建設を発表した。
両マンションとも広島市のマンション開発、分譲等の(株)アーバンコーポレーション(広島市中区袋町4-25、明治生命広島ビル内、資本金三十五億二千九百万円、房園博行社長)と共同事業となる。
計画によると福山市緑町9-38の旧広島大学福山キャンパス跡地を三和鉄構建設が取得した土地の一部でローズアリーナ隣接地三千二百七十平方mがその敷地。規模は鉄骨鉄筋コンクリート造り十五階建てのツインタワータイプの二棟、延べ床面積一万一千九十七平方m、最高部の高さ四五・二三mは市内最高層の分譲マンションとなる。総戸数は3LDKを主に2LDK、4LDK合わせて百十四戸、六月に着工して、平成十五年十月に完成する。施工は竹中工務店・熊谷組共同企業体、分譲価格は未定で、二千万円台が中心となるものとみられている。
敷地内の一部には八月にもモデルルームを完成、九月から本格的な販売活動を始める。建設地は福山市最大の祭り「福山ばら祭り」のメーン会場となる緑町公園の隣接地で、周辺にはスポーツ施設や大型商業施設が立地する市内の一等地で、今回のマンション隣接地に開発した一戸建て住宅地も完売して新しい住宅街を形成している。このマンションの名称は「福山緑町マンション」(仮称)で、正式にはアーバンシリーズのネーミングが見込まれる。
また、尾道市西御所町二番218他の尾道水道沿いの土地五百九十六平方mが建設地の分譲マンションは鉄骨鉄筋コンクリート造り十五階建て、延べ床面積二千七百二平方m、高さ四八・二mは市内最高層、総戸数二十七戸。駐車場は駐車装置と平面で二十七台、駐輪場は二段ラック式と平面で五十二台収容できる。一階は、駐車場、駐輪場、管理人室、エントランスホール、エレベーター御影石のモニュメント、四カ所の植え込みなどを設ける。二階から十五階が住宅スペースとなる。
近く着工して平成十五年八月下旬に完成の予定。名称は「アーバンビュー西御所」(仮称)、問い合わせрO120・421・721
なおこのほどまとまった平成十四年一月期決算は売上高六十億五千九百四十六万円で、前期比二五%増。申告所得額は一億二千八百九万円で大幅な増収増益を達成した。
期中の概況は、同社が初めて本社ビル横に取得した土地に建設した分譲マンション「エステージ高須」が四十五戸の総戸数を完売したことで宅建部門が急増して三五%を占めたことが増収増益に寄与した。総合建設部門と鋼構造物製造工事部門がそれぞれ三一%、本社ビル横で営業しているエクソンモービル系給油所三%の構成比。昨年秋にはISO9001の認証を取得し、さらに技術の向上、高品質構築物の提供を目指した顧客の信頼と満足を得る営業戦略を展開し、受注増に向けた取り組みを推進している。
今期の業績予想は、マンション売上が次期となることから売上高五十億円、経常利益五千万円を見込む。現在施工中の主な鉄骨工事は▼ケアハウス飛鳥苑新築工事(福山市)▼東洋製罐(株)広島工場改造工事(本郷町)▼ヤマダ電機(株)神戸店新築工事(兵庫県)▼仁寿会西館新築工事(島根県)▼タロックス広島工場新築工事(広島市)などがあり、鋼構造物製造工事部門は新工場ともにフル操業で受注の消化に追われている。
同社は、パナホーム備後、三和、備後道路の三社と三和グループを形成している。従業員数百七十八人。


前田組がグループホームを開設支援

総合建設業の(株)前田組(福山市金江町藁江65、資本金五千万円、前田宏社長、電話084・935・7111)の医療施設部は、福山や三原などで実績を拡大しているが、このほど福山市内で六月一日オープンのグループホームを同社としては初めて施工、今後も高齢者ケア施設として注目を集めるグループホームの提案を強化する。
同社が医院などへの提案を進めている低価格グループホームは、入居者の負担額を抑えることを念頭に置き、住宅事業部で培った高品質、低価格建築のノウハウを活用するもの。市場調査、企画、行政機関との協議、設計、施工から開設に至るまでをトータルで支援する。施設利用料は、介護保険料一割負担を含んで月額十万円程度からのグループホームで、入居しやすさによる円滑な運営をPRしていく。
一階につき一ユニット九人を定員として、八十〜九十坪の延べ床面積が標準。そのほかにも、平屋建て二ユニット(十八人)や二階建て二ユニット、補助金対応の中庭タイプなど諸プランを用意した。
在来軸組工法とパネル工法の強さを兼ね備えた耐力壁を採用、ホールダウン金物による基礎、土台と通し柱の固定、鉄筋コンクリートのフルベース仕様によるベタ基礎が標準設定で高強度が基本。
また床合板、フローリングはJAS規格の、構造用木材ボードはJIS規格のそれぞれエコマーク材料でシックハウス対策も配慮している。キッチンは安全なIHクッキングヒーターと、シンク下に足元スペースを設けたキッチン本体で、立っても座っても作業が可能。同社医療施設部松岡武部長は「注目の高まるグループホームの施工実績ができた。これを武器に年内にもう一棟を手掛けたい」と意欲を話す。
福山市松永町5-9-11で同社として初めて施工した「グループホーム敬愛」は六月一日オープン。協力医療機関は医療法人社団涼風会佐藤脳神経外科(福山市松永町5-23-23)とかやの歯科医院(同町5-9-16)。
前田組医療施設部ではこのほか、診療圏調査、土地情報提供、企画、事業計画、収支計画、医療施設新規開業支援や、デイケア・デイサービス・療養型病床群・調剤薬局など諸施設の開業後のサポートまでをトータルで行っている。同社ホームページでもPRしており、アドレスはhttp://www.maeda-gr.co.jp



こぼれ話  2002年6月1日号

風雨が志を試した薪能 11回目で真の姿を現す

雨が降ったらしまなみ交流館で行われるはずの尾道薪能が浄土寺研修道場二階であった。予定では境内の特設舞台でかがり火に浮かぶ国宝の多宝塔と、ライトアップされた新尾道大橋を借景に、観客へ時空を超えた幽玄を提供する手はずだった。
しかし現実は予備会場でもなかった研修道場。雲行きをにらみ、会場を境内とした時刻は午後二時。そのとき天は紛れもなく境内を示唆していた。それが開演一時間前から雨となり、開演直前にはどしゃぶり。天気予報も外す不意打ちだった。
主催者と出演者を泣かせた雨だったが、観客は意外と突然の趣向変えをかえって楽しむわくわくムードだった。舞台の袖は狭く、一階で着替えた出演者が観客を割って舞台脇に入り、舞台後は汗を散らしながら観客の間を帰って行く…。優雅な能とはちょっと異質な舞台となった。
かがり火もなく、これといった音響設備もなく、ぎっしりと観客で埋まった会場は奥に長く、後ろの人は目や耳よりも会場を包んだ空気を肌で観賞、それでも満足気だった。けっこう若い女性も多く、十一回目を迎え、無形文化財の父に替ってシテを演じた二十八歳のホープ、吉田篤史さんの「鍾馗(しょおき)」に熱い視線も注がれていた。
室町時代、足利義満将軍の後援を得て磨き上げられた能は、足利氏ゆかりの浄土寺で十一回を数え、風雨によって観る者の志を試した鬼神が邪心を払い、能本来の楽しさを伝えようと真の姿を現したようだった。

要請される心の処方箋 余席活用で新奉仕活動

福山キワニスクラブ(園尾忠士会長)が発足し、六月十一日の憲章式に向かって具体的な活動内容を詰めている。伝統ある奉仕団体だが福山はもとより中国地方では二番目の設立。ライオン、ロータリーといった既存の社会奉仕団体とは一味違う奉仕を目指し知恵を絞っている。
現在のところ、例会行事の講演を一般公開する考えが有望だという。行政や商工会議所が講演を主催する場合は講師への謝礼が高コストにつく。会員組織を生かせば、キワニスには講師にふさわしい経済人、政治経験者も多く、お願い回りと会場整理の努力を惜しまなければ、魅力的な話がたくさん聞けるのでは…という純粋な発想に基づいている。
金で解決、実現する発想はひと昔前で、プロの講師を呼び寄せる興行的な講演も主旨に反する。教育が大問題になっている日本にあって、学校だけが教育の場でもなくなり、新しい教育奉仕が求められてもいる。
尾道高校(村瀬俊之校長)はしまなみ交流館で行なった学校行事の演劇鑑賞会に、初めて市内及び近郊から中学生を無料で招いた。演劇鑑賞は恒例行事だが、ホールの余席を生かすために考えた地域貢献という。
鑑賞会でオリジナル作「狐とぶどう」を演じた劇団自由人は、平成七年の阪神淡路大震災で神戸市内の稽古場を失いながらも「心」は失せず、古代ギリシャ文明を基調に高校生の琴線に迫り、心の処方箋を模索している。心の処方箋もまた、新しい社会の要請と思われる。(J)

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