びんごトピックス  2002年11月20日号 
 
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山路内装表具が屏風など美術品の「デジタルレプリカ」

金屏風、襖、障子、額装の製造販売の山路内装表具(有)(福山市箕沖町66、資本金三百万円、山路宜嗣社長、TEL084・953・9802)はこのほど、社寺や博物館などで展示、保管されている屏風などの美術品を精密にデジタル化し、複製としてイベントなどで活用できる「デジタルレプリカ」作成サービスを開始した。
屏風や巻物、掛軸、地図、書など美術的価値の高い文化財などを、精密なカメラにより、高い解像度と色情報で正確に再現できるデジタルデータを作成する。細かく描かれている文字や微妙な色合い、筆の運び具合いまで精密に再現可能。また製販行程が必要ないため、低価格、短納期で商品を提供できる。展示目的のレプリカ作成以外でも、ホームページやパンフレットなどにも利用でき、より臨場感のあるPRが可能になるという。また絵図から屏風へといった、原資料と異なる形態へ移行も可能で、用途に応じて柔軟な対応ができるのも特徴。
八、九日に県立ふくやま産業交流館(ビッグ・ローズ)で行われた「びんご産業市場2002」にも出展、東北大学付属図書館所蔵の幅三・九m、高さ一・八mの「坤輿萬国全図(こんよばんこくぜんず)」の屏風のレプリカを展示、来場者の興味を引いていた。
デジタルデータ作成に関しては岡山の映像関連ソフト制作などのコンテンツ(株)(岡山市、小野博社長)と提携。屏風、掛軸など伝統的で特殊な商品を作成、修復する山路内装表具の技術と、デジタル技術のマッチングにより、社寺や博物館で充分な保管体制が整えられず、文化財の破損が進みながらも、外へは出せない、あるいはイベントなどで積極的に展示したい施設にとって有効なサービスとしている。山路社長は「日本が誇れる文化を守りつつ発信するお手伝いができる。レプリカのレンタルなど、面白いビジネスが成長する可能性もあるのでは…」と話している。
同社ではそのほか、着られなくなった着物など思い出の品を屏風に仕立てるサービスなどユニークな事業も行っている。このほどホームページ「屏風屋ドットコム」(アドレス=http://www.byoubu-ya.com )も開設、屏風の歴史や作成行程などを紹介している。


山陽パッケージシステムがつき板とダンボールの「サンパネル」開発

紙器、ダンボールケース製造販売、包装資材販売、重包装ケース製造などの山陽パッケージシステム(株)(福山市千田町大字千田字天神原2467-1、資本金一千百万円、小林大敏社長)はこのほど、同社が製造している重包装資材向けダンボールにつき板を貼り付けた「サンパネル」を開発、インテリア製品などの素材として活用できるものとして提案を始めた。
破裂、圧縮に非常に強く、重量物の包装で木箱の代替物として使用される三層ダンボール「トリプルウォール」の一面または両面に、天然木を薄くシート状に削ったつき板を貼ったものが「サンパネル」。同じ体積の木板に比べ重量は十五分の一から二十分の一と軽く、のりはでんぷん系のりを使用しているため焼却の際にも有害物質が出ず、またリサイクルにも適しており環境にも配慮した素材。打ちっぱなしのコンクリート柱を丸く覆うといった曲げ加工も可能な厚さ三mmのパネルから、五mm、十mm、十五mmの各パネルを揃えた。
断熱、防音などダンボールの特徴もそのまま生かせるうえ、実際の木の板のように見栄えも良く、質感も確保。同社では合板の代替物として、展示会で使用される衝立など簡易な壁材、家具など各種インテリア製品に利用できる素材として提案していきたいとしている。
「サンパネル」は同社が家具メーカーと共同で開発したもので、素材としての実用新案登録も行った。このほどビッグ・ローズで開かれた「びんご産業市場2002」にも出展。ダンボールを使用した犬小屋やテーブル、椅子など遊び心のある製品とともにサンパネルをPRした。六月に新社長に就任したばかりの小林大敏社長は「サンパネルは軽くて丈夫。インテリア製品素材としての需要を掘り起こしたい」と意欲を話している。問い合わせはTEL084・955・3221同社まで。


福山通運の福山神辺流通センター完成

福山通運(株)(福山市東深津町4丁目20-1、小丸成洋社長)は、深安郡神辺町大字下御領字上手樋六四五の井原鉄道高架近くに建設していた「福山神辺流通センター」が完成し、十二月二日(月)オープンする。
同センターは敷地面積七千九百八十七平方mに、鉄骨造り五階建て、延べ床面積二万二千九百三十五平方m。一階のトラックターミナルは二十m×八十m、配置車両は二t二十四両、四t八両、計三十二両。内部には一時保管庫、荷捌所、事務所を設ける。設備としては貨物用エレベーター一基(三t)、垂直搬送機一基(一t)、乗用エレベーター一基(九人用)、田中美歳センター長と従業員はパートを含めて六十人程度を配置する。施設の建設は五洋建設(株)(東京都)が施工し、総事業費は約十一億円。
同センターは二十六カ所目の拠点となる。山陽自動車道福山東インターにも近く、神辺町、井原市、後月郡周辺を営業区域に輸送体制を整備する。大型流通センターとしてはさる七月に豊中流通センター、十月に舟橋流通センターがオープンしており、来春にはつくば流通センター(茨城県岩井市)が相次いでオープンし、全国十二カ所に開設される。福山神辺流通センターTEL(084)965・0292、FAX(同)965・0130
十一月八日発表した平成十五年三月期の九月中間決算の業績予想修正では、売上高一千百七十億円を一千百四十五億円に減額、評価益などで経常利益は二十億円を二十七億円に増額した。



冷凍食品の都吹が久井工業団地へ新工場建設

冷凍食品製造業の都吹(株)(世羅郡甲山町川尻636-1、資本金一千万円、信川誠社長)は、県営久井工業団地(御調郡久井町下津字大向山1126-38)へ新本社工場を建設するため、十一月一日に信川誠社長、施工業者らが出席して地鎮祭を行い、建設工事に着工した。
新工場は同団地内の一万二千二十六平方mに、鉄骨造り一部二階建て延べ面積三千三百二平方m、一階が冷凍食品加工場、二階部分には本社事務所、新製品等の研究開発室、品質管理室を完備してハサップ対応工場を目指している。一部には社員食堂など厚生施設も設ける。隣接地には二千五百平方mの増設用地も確保している。
「研究開発部門を充実させて新製品やコストダウンを図るなど増加を続ける輸入商品にも対応できる差別化商品の開発も加速させる。また、多品種小ロットの受注にもスピーディーに納品できる体制も構築する。また、地元産品を使った新製品の開発にも取り組む」(信川社長談)としている。
来年三月中旬に完成、四月から本格稼働をはじめる。現在の工場に比べ新工場では大型車両の通行ができることや山陽自動車道三原久井インターに近いことから流通コストの低減など利便性が高まるとしている。
現在の本社工場は生産ラインの一部を残し、トリキモと今川焼の製造を担当する。新工場の設計は(有)建築工房、施工の元請は大和ハウス工業(株)、実質的には三島産業(株)が担当する。総事業費は土地取得費も含めて約八億四千万円を見込んでいる。
同社は、昭和五十九年二月創業の冷凍食品製造業。同社が開発したヒット商品も多く、着実に市場を拡大しており、主な取引先は業務用・小売り用たれ等の調味料メーカーとして知られる日本食研(株)(今治市)、加工食品大手の上場企業(株)ニチロ(東京都)、食品大手の昭和産業(株)(東京都)、冷凍食品専業大手の(株)加ト吉(香川県観音寺市)の子会社、ケ―エス冷凍食品(株)などの優良企業で、相手先ブランドでの納入が主力となっている。平成十四年六月期の売上高は十一億円規模。新工場が稼働を始めると営業力を強化して大手メーカーのほかスーパー向けの直販体制を整備して、五年後には売上高を十五億円に引き上げ、利益率向上を図る。従業員は四十四人、新しい本社工場が完成すると六十人体制に引き上げる。
主な製品は、野菜の入った冷凍豆腐、鳥の唐揚げ、ハンバーグ、春巻き、さつま揚げ、トリキモしぐれ煮、今川焼きなど四十品種、豆腐製品は月間八十t、トリキモしぐれ煮は四十tを生産する人気商品として売り上げを伸ばしている。
県営久井工業団地は、(株)友和の配送センター、広島県清掃事業協同組合のリサイクルセンター、シンレキ工業(株)の舗装材工場が稼働しており近く(株)ソーゴの新工場が完成する。都吹は五番目の立地企業となる。




こぼれ話  2002年11月20日号

神頼みこそ経済の真髄 心理学でヒット商品を

先月、日本では民間研究者として初めてノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが新聞・テレビをにぎわした。島津製作所の株価も急上昇して大いに研究者を抱える日本企業のはげみになった。ニュートリノ発見で同物理学賞を受賞した小柴昌俊教授も日本の独創的な技術力を知らしめ、日本株を上昇させた。
しかし現実の株式相場はバブル崩壊後の最安値を更新する底割れ状態が続く。どうも経済の概念そのものが変容していると感じる。これまでの経済は科学の領域で未知なるものを拒否し、不可解なまま受け入れる領域とは一線を画してきた。それがあいまいなものを取り込む経済に変質しているように思える。
不況期はヒット商品の企画に頭を巡らせることになるが、哲学や心理学といった分野で扱われる領域を組み込んだ商品がこれからも人気を集めるのではないかと推察できる。理論的な根拠は乏しいがそう感じる現象が増えてきた。
四国巡礼同様、尾道で古寺を巡る観光の七佛めぐりが好調なのもその一つ。経済的に儲かっているという意味ではなく、今のところは存在感が増しているという変化に過ぎないが、七佛めぐりに参加している西国寺や浄土寺自体も元気だ。
西国寺は中国四十九薬師霊場の合同法要を十一月九日に営み、福山市内の県立歴史博物館で寺宝展を開催中。浄土寺は十月二十三日から十一月四日まで源氏絵まつりを実施、チベット密教を伝える僧侶を迎えて十一月十七日には法要も行なった。
残る尾道三山の一つ千光寺でも寺の行事ではないが、千光寺公園内で安藤忠雄氏の手による市美術館の改築工事が終わり、開館効果による観光客(参拝者)増が期待される。
福山では経済成長を支え、象徴的だった老舗の福山グランドホテルが来年一月の閉鎖を決める一方、福山の福をキーワードにした「鯛ロードマップ」など神仏にあやかる活性化プランも動きはじめた。
不況期には宗教がはやるといった現象とは根本が違い、戦後の経済成長期に置き忘れた日本人らしさの復活が根底にあるように思える。
今年、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授は不確実性下で心理学的研究を経済学に組み込み、投資家の意思決定が客観的な確立でなく、主観で行われるという結論を導き、投資結果として十万円の損をした場合と得をした場合を比べ、同じ金額でも損をする場合の方が心理的な影響は大きい場合があると分析した。専門家によれば、カーネマン教授らの研究は、これまでの合理的な行動を前提としてきた経済学に根本的な見直しを迫るきっかけになったという。
地球環境や老人を守るといったコミットメントが世界に先駆けて行動基準に加わり、合理的な経済学では説明できない側面が混沌と現れ、揺れているのが日本経済の実態ではなかろうか。昔、あいまいなものを取り込む術こそ日本文化の真髄だったはず。血の通わない不良債権処理策で実態経済が好転するとも思えず、苦しいときの神頼みこそよほど的を得た経済対策に思える。(J)

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