びんごトピックス  2003年8月1日号 
 
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寺本鉄工所が国内最大級フック完成

船舶関連鉄鋼加工業の(株)寺本鉄工所(尾道市正徳町29-21、資本金三千六百万円、寺本吉孝社長)は、大型起重機船に使う国内最大級の主巻用フックブロック四個を完成し、七月十九日、受注先の石川島播磨重工業(株)へ発送した。
このフックは全長六四〇五mm、ツメの最大幅三六〇〇mmは国内最大、多可さ一一五〇m、一個の重量一六t、主巻定格荷重三千t、納入価格は約一億円、一個の生産日数に七ヵ月を要した国内最大級の大型フックで、同クラスの大型フックの受注は十年に一度ある程度、これまでの記録は、昭和六十二年に港湾海洋土木主力で、大型起重機船を所有し、関空二期工事、神戸空港工事などを受注した神戸市の寄島建設(株)の大型起重機船用に納入した主巻定格荷重四一〇〇tが国内最大で、同社が四個を製造しており、大型フック製造では有力メーカーとして知られる。
今回のフックは、石川島播磨重工業(株)が建造している深田サルベージ建設(株)(大阪市港区築港4-1-1、白瀬幸二社長)の大型起重機船「富士」のクレーン用ワイヤの先端に使われる前フック・後フック四個。同船は船体の長さ一〇五m、幅四六m、深さ八m、八月末に竣工し、全国の架橋や護岸浚渫工事などの海洋土木工事で活躍する。
深田サルベージ建設は、海洋土木、鉄構造物の運搬・組み立て・据え付け、海難救助、内外曳航等で知られる業界大手。
寺本鉄工所は、昭和九年創業の老舗で、天井クレーン用フック製造では業界二〜三位の実績がある。船舶のデッキクレーンやポストの製造がメーンで、鍛造・鉄工製品、船用荷役製品、船用艤装品及び金物、オリルリグ製品、浚渫船用製品なども手掛けており年商六億円、従業員五十人。工場は市内に本社・福地工場、栗原工場、長者原工場の三工場体制。
主な納入先は、石川島播磨重工業、MECエンジニアリングサービス、内海造船、今治造船、尾道造船など全国の造船所、大手商社、海洋土木工事会社など多数。
なお、さる五月、株主総会後の取締役会で、寺本守三社長が会長に退き、寺本吉孝副社長が社長に就任した。新社長は昭和四十二年六月五日生まれで三十六歳。平成四年サンディエゴシティカレッジ卒、同五年一月に同社に入社、社長室長、副社長から社長就任。寺本守三会長の長男。


日東電工が尾道に第四工場建設

テープ類など総合材料メーカーで、半導体・液晶向けで高いシェアを持つ日東電工(株)(大阪府茨木市下穂積1-1-2、資本金二百六十七億八千三百万円、竹本正道社長)は、液晶モニター、液晶テレビなどの需要急増に対応する一連の設備投資に約百四十一億円を投入して、国内の二工場と海外加工拠点の生産能力の増強を急いでいるが、このほど追加投資として尾道事業所(尾道市美ノ郷町本郷455-6)への第四工場建設を決めた。
尾道事業所では既設の第三工場に約四十六億円を投資する設備増強工事を進めており、九月には新ラインを導入して年間四百万平方mのLCD用光学フィルムを増産する。
今回の第四工場建設計画は、約八十億円の事業費で工場建屋と生産ライン等の関連設備を導入するもので、八月に着工して来年四月から稼働を始める。操業を始めると大型液晶向け中心に、年間七百五十万平方mを生産する。
尾道事業所では第三工場のライン増設や第四工場建設で、従業員の増員を始めており、地元の雇用に明るいニュースとして関係者は期待している。
今回の第四工場建設の背景には、液晶モニターの急速な普及と、三十インチを超える大型液晶テレビの需要が当初の予想を上回るスピードで普及するとみられており、日本を始め韓国、台湾の主要大型パネルメーカーが超大型ガラスサイズ製造のための設備投資計画を発表しており、投資意欲が強いことがある。同社でも尾道工場の第三工場への新ライン増設、亀山に新工場を今年十二月完成させるほか、海外の加工拠点でも能力増強を急いでいるが、さらに供給不足が確実になる状況から急きょ、第四工場建設に踏み切った。
同社の平成十五年三月期業績は、単体売上高二千二百五十四億五千万円、経常利益二百五十億九千七百万円、当期利益百五十億九千九百万円。
子会社三十八社の連結売上高三千七百八十七億五百万円、経常利益三百五十八億三千二百万円、当期利益百九十二億三千七百万円、従業員は連結で九千五百七十人、工場は宮城県に東北工場、埼玉県に関東工場、豊橋工場、亀山工場、滋賀工場、尾道工場。


オガワエコノスが鵜飼工場増設

一般・産業廃棄物処理・再生の(株)オガワエコノス(府中市高木町五〇二―一〇、資本金一千万円、小川勲社長)は七月十一日、鵜飼工場(同市鵜飼町800-113)敷地内で二期工事を進めていた古紙梱包施設と容器包装プラスチック類選別梱包施設完成に伴い竣工式を行った。
古紙梱包施設は延床面積四百五十平方mで、床面の投入口に投入された紙、ダンボールなどの古紙を一日に百二十三t梱包処理するラインを備える。ダンボールの場合一・二t分を一・八m×一m×一・一m、約二立方mの直方体に圧縮梱包する。 
容器包装プラスチック類選別施設は延床面積六百平方m、破袋機、手選別コンベア、減容機で構成。床面の投入口に投入された袋入りの容器包装プラ収集物を手分別しそれぞれが圧縮、梱包される。処理能力は一日に四・六八t。プラスチックの場合二百五十kg分を一立方mの立方体に圧縮梱包する。両施設とも本山工場(同市本山町530-85)の老朽化した設備を増強するために設けられ、省力化と処理能力増加を実現した。総投資額は一億五千万円。
両施設に先立ち一期工事で完成したRPF製造施設とエコ堆肥製造施設も既に稼動中。RPF製造施設は再生利用が困難だったプラスチック類廃棄物を、木、紙系廃棄物と混ぜ固形燃料化する施設。異物混入が少なく含水率も低いため、RDFの二倍以上の発熱カロリーを持つ燃料に再生できるのが特徴で、県内初の製造施設。エコ堆肥製造施設では、水分を含む動植物残さを発酵で有機肥料に加工している。同社は四施設の完成で、新規分野への大型先行投資を完了した。
また竣工式当日、地元貢献事業として制作した「ゴミ分別辞典」一万四千部を府中市に寄贈した。市内各世帯に一部ずつ配布される。創業五十年の昨年から準備を進めていたもので、A5版カラー印刷で全四六頁、三百九十四品目のごみの分別法を五十音順で解説したもの。
なお五月には中国地域ニュービジネス協議会(会長=松坂敬太郎ヒロボー(株)社長)優秀賞を受賞。「RPF固形燃料化事業を中核としたトータルリサイクリングシステムの展開」が対象となり、処理コスト低下、環境負荷低減、地球温暖化阻止に貢献する事業を行う積極的な市場開拓型企業として評価された。


サンラヴィアンが工場を全面改装へ

洋菓子製造の(株)サンラヴィアン(浅口郡里庄町新庄3920、資本金九千三百六十万円、占部守弘社長、TEL0865・64・4771)は今月、敷地内の焼き菓子工場の全面改装に着工する。
チーズケーキやカステラなどを製造し、鉄骨造り平屋建て延べ床面積約四千平方mの焼き菓子工場にリニューアルするもので、異物混入の原因となる雑菌を含む外気を入れないよう気圧差を作るなど品質管理の徹底が特徴。HACCPに対応して十一分割した工程のうち、計量、ミキシング、充填など最初の工程での異物混入防止を徹底するため、二段階の工場入口を設置する「デュアルエントリーシステム」を採用。従業員の出入りを最小限に止め、最前工程専用の二つ目の入口でさらに作業服、作業靴に履き替え衛生管理を徹底する。同社によると二段階の入口設置は業界初の試み。
作業場の周りは一般の見学コースを兼ねた廊下とし、車イス専用のエレベーターも設置するなどバリアフリーも意識した。リニューアル後のイメージは「スタジオ」。従業員が自分を演じる場として楽しく安全に作業できる環境を整える。設計、施工は(株)オカダ(福山市卸町)。来春の完成を目指す。
またこれまで別の場所にあった商品開発室と商品保証室、資材管理室を鉄骨造り二階建て延べ床面積約千平方mの研究棟に集約。安全性、信頼性の高い商品を供給するため、製造前の段階からの原料メーカーを厳しく選別、トレーサビリティを高める体制を確保する。
さらにリスクマネジメント強化と製造管理強化を狙い外部から新たに三人を招聘、施設と人の両面から品質管理徹底を図る。同社の占部龍弘常務取締役は「仕上げの工程をきれいにするのは当たり前。重要なのは安心な商品を開発する段階からの空間作り」と増改築の意義を話す。
また大学新卒の入社希望者も増加した。同常務取締役は、直販サイト「カフェ・サンラヴィアン」(アドレス=http://www.sunlavieen.com/)がおしゃれなデザートメーカーとしてのイメージ定着に一役買っていると見る。同サイトはマーケティングに活用、「アンケートで得られる情報に基いて開発した商品が市場に乗っていく」と効果を実感している。全国送料無料でシュークリームやパイ、ギフトセットなどを販売中。



こぼれ話  2003年8月1日号

公教育の世論はどっち 論客とうろたえる市民

尾道市公会堂で七月二十四日、尾道の教育を語る市民連絡会の主催で第二弾「やっぱり尾道の教育を考えよう市民の集い」が開かれ、約八百人が京都女子大学教授・精神病理学者、野田正彰氏の講演を聴いた。
同会が主催した前回集会は六月三日、公会堂別館で行われたパネルディスカッション「『高須小問題』の真相を語る市民の集い―高須小で何が起こったのか探って見ませんか!―」だった。当欄で紹介したようにそのときも教員の方が聴衆に多かったが、今回も教員の方が多かったと思われる。
野田教授は精神科医の立場を強調して教員の過重労働の問題を指摘していたが、毎日新聞への寄稿でも「権力犯罪」「教育行政の退廃」といった言葉で「全体主義化する教育界」へ警鐘を鳴らす論客。今回の集会でも市教委と県教委の問題点を「バカの集まり」といった辛辣な言葉で断罪していた。
教員が書類漬けになって子どもとの触れ合う時間がなくなっているという報告は教員の知人からも直接耳にする話。何か改善策が必要だとうなずける。それにしても教員の立場を代弁する場面で拍手が会場いっぱいだったのは、会場に教職の人が多かったことを印象付けた。
尾道市議会も傍聴し、自殺した慶徳和宏高須小元校長の遺族にも面談したという野田氏の話は事実に基づく筋の通った話で、聞く者を説得させる大きな力があり、聴講すれば、市教委や県教委の問題点を認識する人がどんどん増えるに違いない。
しかし鋭い論客であるだけに恐ろしいと感じさせる一面もあった。それは講演後の質疑応答に入ってのこと。若い男性が「高須小の教員に問題はなかったのか?」と質問すると、野田氏は即答で「まったくないと思う」と断じた。逆に「私はそうは思わない」という質問者に「なぜそう思いますか?」と質問を投げかけたが、その語彙の強さはうろたえる質問者を優しく導くムードとは違い、疑問の余地を挟まない鉄壁の理論を印象付けるものだった。
息を整えた男性が「国旗掲揚問題で抵抗があったのでは?」と質問すると、「法律は通っても間違っているものは間違っている」と揺らぎない返答。再び男性に「あなたの上司に突然、経験も知識もない人がなったらどう思いますか?」と質問を浴びせ、男性が「困ります」と素直に返事をしたところで会場いっぱいの拍手が沸き起こった。講演で語った民間人校長の問題点を再確認したかっこうで、男性は何か反論したかったように見えたが、拍手に掻き消されるように静かに着席した。
この集会は参加者のバランス面からは「市民の集い」ではない。職業や立場が教員等に偏っている。偏りのない市民が集まること自体は現実的に難しいが、論理に強い声の出し方のうまい人が世論を形成しようとする集会にも思える。
世界一素晴らしいデザイン「日の丸」。そう感じている人は国のトップばかりでなく、身近に多く、決して少数派の市民でもない。しかしこれとて根拠は心もとなく、世論の形成が求められよう。(J)


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