びんごトピックス  2003年9月20日号 
 
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鐡萬商事が私募債2億円調達で陸機分野強化

船舶用鋼材販売とショットブラストの有力企業、鐡萬商事(株)(尾道市長者原2-162-4、資本金四千五百万円、池田邦夫社長)は、陸上の一般機械向け鋼材の販売を強化するため、設備と在庫量の増強に本腰を入れ始めた。
八月二十九日に広島銀行を引受先として無担保私募債を発行、九月二十二日には商工組合中央金庫(商工中金)を引受先として同じく無担保私募債一億円を発行、格付けの高い安定資金二億円を得て、総在庫量を現在の二万五千トンから二千二百種の三万五千トンに引き上げる。
同社は昨年八月、陸材を保管するための新倉庫を約一億五千万円かけて建設。陸材用鋼板の本格的販売を開始、順調に受注が伸びていることから倉庫増設に踏み切り、ショットブラスト工場隣りに八月、鉄骨平屋建て延べ面積五百六十平方m、十トンクレーン一基を設置した専用倉庫も約四千二百万円かけて増設した。
新倉庫は造船用形鋼のほか一般形鋼、平鋼など五千トンを在庫。既存倉庫分も含め陸材用鋼板はSM400、同570、SM490YA、同YBなどの中間材が主体となる。
同社は「造船鋼材の特急便」のキャッチフレーズで特殊鋼材でも速やかに配達する独自システムを構築。北海道で注文後三日、九州では午前中の注文は翌朝配達する全国配送システムを確立している。造船のノウハウを陸上分野にも活かす。
既に広島、岡山県を主に西日本の鋼板の切断、溶接業者や鋼板問屋などに営業を展開、在庫圧縮を図るユーザーと思惑が合致し、売り上げを伸ばしている。
平成十五年三月期は売上高で前期比三五%増の約三十億円、利益九千九百万円を計上。造船分野に偏るリスクを陸上部門の伸展で回避、収益の安定化も図る。


田辺工業が加工の「コンビニ」化戦略

アルミダイカスト加工などの(有)田辺工業(府中市木野山町299、資本金三百万円、田辺博之社長、TEL0847・68・2126)はこのほど、鋳造部品などの漏れを止める含浸処理、鉄鋼材料などの熱処理、刃物再研磨の各設備を整え加工事業部門を強化した。
含浸処理はミッションケースやシリンダーケースなど自動車エンジン部品のほか、ガス・水道設備部品、医療機器などに使用される鋳造部品に発生する鋳巣と呼ばれる穴を塞ぐ作業。部品を脱脂洗浄し、含浸剤などで空気を抜き樹脂や水ガラスなどで潰し、漏れをなくす。同社では一日に二t程度の処理能力がある。
熱処理は小型の鋼構造物に対応。縦十九cm×横二十八cm、奥行四十三cmまでの部品に対し、最高温度千百度までの温度操作で焼きなまし、焼きならしを行い硬度や粘りなどの性質を変化させる。鋼の種類は問わない。一日に二百kg程度処理できる。
刃物再研磨はエンドミルクラスで一日百本程度の処理能力。一般的に大手商社を通しての再研磨では、納期が一カ月と長いため、在庫が必要となる。同社では最長でも二日程度、場合によっては即日納入も可能なため、在庫削減のメリットを強調しながら地元の機械メーカーなどに提案していく。ラフィングエンドミル、千鳥刃サイドカッター、メタルソー、バニシングドリル、面取りカッターなどに対応する。
地元のメーカーはこれまで、こういった加工は東京や大阪の業者に外注することが多かったという。特に熱処理に関しては順番待ちに不満を感じる業者も多く、需要が見込めるとする田辺社長は「地元に密着したコンビニ的な加工サービス。便利に使っていただきたい」と独自技術をPRする。同社では各種溶接とともに小口、短納期で対応できる加工サービスとして府中、福山で営業を展開する計画。井原への営業も検討中。ホームページ(アドレス=http://www6.ocn.ne.jp/~tanabe.i/)でも紹介している。
同社はアルミダイカスト製品の機械組み立て、ライン製作、バリ取りなどが主。最近ではインドネシアからの研修生を受け入れるなど、生産コストの低下に取り組んでいる。ラインに日本人とインドネシア人を交互に配置し効果的に研修を実施、まじめな研修態度に職場の雰囲気も引き締まり、固定費削減分以上の効果を上げている。


DACがパン製造販売車開発

中古車販売、レンタカー業などの(株)DAC(福山市南蔵王町5-8-15、高田孝信社長、084・941・8070)はこのほど、パンを焼くオーブンを車内に搭載した移動製造販売車を開発、移動しながら焼きたてのメロンパンを販売するビジネスを展開する大阪ベーカリーショップ企業組合に納入する。
六人乗りのワゴン車を改造して開発した移動製造販売車は、車内後部に一回十五分で三十六個のパンが焼けるプロパンガスオーブンを内蔵。二、三時間で七百個を発酵させる専用ラック、千個の生地を保冷できる冷凍庫、発電機も備えている。集客を促進するための甘い香りを噴き出すダクトもある。
大阪ベーカリーショップ企業組合が全国展開する新ビジネスに利用されるもので、ドラッグストアや郊外型の日用品小売店の駐車場などで、焼きたてのメロンパンを消費者に提供する。イベント感覚で多くの集客が見込め、大阪などでは月二十五日稼働で一日平均千個を売り上げるなど既に実績を上げているビジネス。同組合は今後神戸、名古屋、兵庫、岡山、広島などで展開していく予定。年内に百台まで増やす。


タカハシがアパマンショップ福山東店開設

不動産売買、仲介、管理の(有)タカハシ(尾道市高須町東新涯4755-39、資本金千三十万円、高橋大蔵社長)はこのほど、加盟する「アパマンショップ」の福山東店をオープンさせた。
福山東店の住所は福山市南蔵王町6丁目12-3-101、電話番号は084・946・6368。営業拠点開設にともない、本社で発行する売地、売家、賃貸マンション、アパート物件などの情報を集めた不動産情報の対象エリアも広げる。
同社は尾道市内を中心に賃貸アパート約千戸を管理、毎年三百〜三百五十件の賃貸仲介を行い、売買物件も三十〜三十五件を扱う。
アパマンショップは(株)アパマンショップネットワーク(東京都)が展開するフランチャイズチェーン。賃貸斡旋店舗のネットワークで全国の賃貸物件が気軽に探せる。専門雑誌発行とインターネット等による検索に独自の強みを持つ。タカハシは広島県内で初のアパマンショップ看板を掲げ、東福山店の出展を加盟当時から決めていた。
またソフトバンクBBのブロードバンド加入代理店として「Do It 高須町東新涯 Station」も八月に開設。IP電話が無料で使用できるインターネットプロバイダー「ヤフーBB」の契約を取り次ぐ。当面は管理先の入居者のオプションサービス的な営業として対応する。



こぼれ話  2003年9月20日号

無駄と文化を切り分けず 番外!しまなみ自転車道

日経新聞九月十三日付NIKKEIプラス1の何でもランキングはお薦めのサイクリングコース。一位は大分県中津市から山国町までの約三十五kmを結ぶメイプル耶馬サイクリングロード。鉄道廃線跡を利用、景勝地を走り抜けるコースとのこと。
サイクリングの専門家十七人に選んでもらった結果とのことだが、残念ながら十位までにしまなみ海道の名はなかった。しかし解説する本文記事の中に番外編として「瀬戸内海横断自転車道」を推す声が多いとある。面目躍如。世界に唯一の海上サイクリングコースと自負する地元としては推す声に感謝したい。
専門家十七人のうち誰が声の発信者か知る由もないが、シマノ自転車博物館の中村博司事務局長の名も並ぶ。しまなみ海道の開通を前にした一九九七年九月二十三日、尾道青年会議所が開催した「しまなみサイクリングシンポジウム」にはシマノ自転車博物館から借りた珍しい自転車を尾道市公会堂に展示、中村博司事務局長やプロロードレーサー今中大介さんをパネリストにサイクリングの大きな可能性を探った。あれから六年。しまなみ海道の開通イベントフィーバーは九九年の一過性だった面が多いが、ツール・ド・しまなみを始め、瀬戸内海の多島美と長大橋が織り成す景観を駆け抜ける爽快感はまったく変っていない。
開通四年目にしてランキングできなかったまでも番外編で別格扱いの評価を得たしまなみ海道。尾道を、そしてしまなみ海道を訪れた専門家の心に染込んでいた記憶もきっと甦ったに違いない。
専門家たちが期待を寄せてくれたサイクリングロード、しまなみ海道であるなら、地元もその期待に応えるべきだろう。六年前のシンポジウムには開通ブーム後の今こそ学ぶべきヒントがあった。
シンポジウムでパネリストらが語った自転車は、乗るのに便利な道具としての自転車ではなく、地球環境を守る、人の生き方に深く係る道具としての認識だった。
自転車を売るBMWやポルシェといった海外の自動車メーカー。乗ることで環境意識を示すアメリカのビジネスマン。貸し自転車のスポンサーとなっているスイスのチーズメーカーなどなど。人力で動く自転車の素晴らしさを誇りとして活用している例が多かった。
本四公団のつくったしまなみ海道はどうか。帳簿上の数字を根拠にした民営化論で揺れ、人の生き方としまなみ海道の関係など語られることもなく、とても自転車道が評価されているとは思えなかった。無駄と文化を切り分ける論議の難しさは分かるが、しまなみ海道を自転車で走った専門家の声をせめて地元だけでも重く受け止めたい。
海外では国が自転車専用道路もシャワー施設も整備しているという。世界に誇るしまなみサイクリングロードを車に例えれば、エンジンも車体も最先端。ただ人が座るシートだけが未整備でカタログスペックだけが立派、実際に走ると肉体的な不満が残るといったところ。財政難も切り抜け、心から自慢できる自転車道に育つ日を夢みたい。(J)


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