びんごトピックス  2003年10月1日号 
 
表紙写真


日本農園がハイテク「野菜工場」建設

リフトテーブル、物流システムなど産業機械製造の(株)河原(尾道市長者原2丁目162-11、資本金十五億八千七百五十万円、河原良雄社長)の河原栄会長と同社が出資して設立した農業生産法人、(株)日本農園(世羅郡世羅町大字田打609-91、資本金一千万円、河原栄社長)が、世羅町に国営農地開発事業として造成した「百貫山団地」に「野菜工場」を建設する。
さる九月十九日、県庁本館四階の農林水産部長室に、県と同団地保有の県農林振興公社、世羅町、日本農園の関係者が出席して立地協定書交換式を行った。
計画によると、百貫山団地の一角で、平成十三年九月に本格操業を始めた同団地進出第一号のトマト温室栽培「世羅菜園」の隣接地、八・四六ヘクタールを取得、サラダ菜を水耕栽培するポリカーボネイト製の温室、管理棟の施設規模約一・六ヘクタールを建設し、従業員約二十人を雇用して平成十七年前半から従業員二十人を雇用して操業を始める予定。
温室や管理棟などの施設は今年後半にも建設工事に着工する予定で、事業費は約八億円を見込んでいる。
野菜工場は、カナダの企業、ハイドロノヴ社が進めているフローティング・ラフト(浮かぶイカダ)生産方式を日本では初めて導入して、サラダ菜の水耕栽培を行うもので、世界的にも同方式による施設はカナダ、アメリカ、メキシコに各一ヵ所、中国に五ヵ所ある。株式会社による農業生産法人は県内に一社で、同社は二社目、全国的にも四十二社。
百貫山団地への立地は、河原社長から尾道市を通して県商工労働部へ産業団地分譲の打診があり、農業法人であることで検討した結果、県農林水産部から同団地への進出を提案し、立地決定した。その背景には財団法人広島県農林振興公社が保有する同団地が工業団地に比べて土地代が低価格で取得できること、流通など道路アクセスなどの利便性が高いことが決め手となった。
野菜工場を経営する(株)日本農園(にっぽんのうえん)は、今年五月十四日設立、農産物の生産・加工及び販売、農場の経営が目的で、役員構成は、代表取締役社長河原栄氏、取締役四人、監査役一人が就任している。百貫山団地内にはトマト加工品トップのカゴメと提携して資本参加している(有)世羅菜園が、ロックウール養液栽培法を採用して温室で水耕栽培による生鮮トマトを生産しており、日本農園が操業を始めるとハイテク技術による野菜工場二社が農業団地を形成することになる。


労働者派遣のシジアスが営業スタート

労働者派遣業などの(有)シジアス(福山市引野町1-17-1、資本金三百万円、田辺敏幸社長、TEL084・940・5245)が九月十二日付けで設立され、営業を開始した。
全国展開する大手や地場の派遣業による競争が激化するなか、同社は特に出向前の社員教育を重視することで他社との差別化を図る。同社が開発した二十時間程度の教育プログラムを修了した社員には書面で「修了証書」を発行、出向先企業にも提示して責任の所在を明らかにすることで信頼の拡大を狙う。
また出向先の現場が望む教育についても情報を積極的に収集する。どういう分野を重点的に教育すれば良いのかを事前に確認し、マナー教育だけでなく安全教育や講習にも対応、けが人の出ない出向を実現する体制の確立にも注力する。既に笠岡や倉敷の製造業、三原の飲食業などから数件の受注を確保しており、年商三億円を目標に営業活動を本格化させる。
社名は「仕事」の音読みと「明日」を組み合わせた。事務所はJR東福山駅北口すぐそばでアクセスも良く、線路側に目立つ看板を設置、知名度アップに努める。また神奈川県平塚市にも営業所を開設し、広島県内に工場を持つ自動車部品加工などの大手メーカーへの営業活動も同時に進行させる予定。
田辺敏幸社長は「就業時間に対する考え方や最低限のモラルなどを徹底して教育することで、クライアントに満足してもらえる質の高い出向を実現したい」と意欲を話す。


ハイマン翻訳が専用メールアドレスで翻訳代行

翻訳などの(株)ハイマン翻訳(福山市南本庄町2-4-27-102、B・ハイマン社長、TEL084・928・3544)はこのほど、海外取引先とメールを送受信する業者を対象に、そのメールを専用メールアドレスで管理、それぞれの言語に翻訳し送信する新サービスを始めた。
海外業者と取引する、または検討している日本の業者に、専用メールアドレス「××××@yokomoji.com」(××××に社名や部署名、製品名など)を提供、海外業者からのメールをそのアドレスのメールサーバーで受信し、ハイマン翻訳が翻訳した後、相手業者に送信するサービス。お互いに国内業者とメールの送受信を行う感覚で商談などを効率的に進められるメリットがある。
日本の業者が外国語に不慣れな場合、独力で翻訳した文章の不自然さや、翻訳業者とのやりとりにかかる時間の長さが、相手からの信用を失う原因となることも多い。同サービスでは通常二十四時間以内で翻訳を行うため、迅速な返答と自然な言葉遣いで相手企業からの信頼を増すことにもつながるという。また迷惑メールも同サーバー内で止まり同社が経験に即して処理するため、スパムメールを苦労して訳す、というような時間ロスを防ぐこともできる。
既に同サービスを利用している福山の業者は、海外向けパンフレットやホームページの英語ページのメールフォームに掲載。取引先からも好評を得ているという。
料金は、専用メールアドレス使用料が月額五千円で、これに翻訳料金を加算する。同サービス利用者は契約書や取扱説明書の翻訳、通訳などのサービスが一割引きとなる。翻訳が必要なメールが一定量ある場合は、アドレス使用料と三万五千円分の翻訳料金をセットにして一万円を割り引く月額三万円プランほか各料金のセットプランも用意した。
ハイマン社長は「おそらく業界初。海外に物を売りたいと考えている地元中小企業からSOHO、個人までを対象にその窓口となり、グローバルな展開をお手伝いしたい」と話している。ホームページ(アドレス=http://www.yokomoji.com/email)でも紹介している。


引野町に住宅団地「ゆめみが丘」完成

総合建設業の三島産業(株)(福山市西深津町5丁目21-8、資本金九千五百万円、三島康義社長)は、福山市東部の丘陵地、市内引野町字西沖浦地内に市内最大規模の住宅団地「ゆめみが丘」を完成し、九月十九日(金)から分譲を始めた。
十九日には午前十時から現地でオープニングセレモニーが開かれ、同社のほか住宅メーカー、地元町内会などから約七十人が出席した。来賓として出席した三好章福山市長らがテープカットし、くす玉を割って団地の誕生を祝った。
同団地の周辺には「平成台」や社宅などの住宅団地が立地する。開発面積十二万二千七百十四平方m、総区画数三百十二区画、同社が販売するのは二百四十五区画、一区画の平均面積は約一八五・四六平方m(約五六・一〇坪)、分譲価格は坪単価十八万七千百円から二十二万二千三百円、一区画九百七十五万四千円から千三百三十六万一千円、最多販売価格帯は一千万円台で三十三区画ある。
同団地の計画人口は約千二百五十人を予想している。同社では住宅建設も含めて約三千万円以内を設定している。
第一期分譲区画は八十五区画、このうち九百万円台が十六区画、坪単価十八万円台が二十四区画ある。団地内には三ヵ所の公園を設ける
立地的にはJR大門駅、東福山駅やスーパーなどは車で約十分、小学校など教育施設は徒歩で約十五分の距離に三施設ある。日本鋼管福山病因は車で約五分。現地には販売事務所を開設している。TEL(084)946・6651
同社は大正十一年四月創業の老舗で、業歴八十一年、会社設立は昭和二十四年三月、市内駅家町万能倉に本店ビルを構えている。笠岡市二番町の国道二号沿いに笠岡営業所がある。平成十一年七月、ISO9001の認証を取得している。



こぼれ話  2003年10月1日号

「山」と「人」、「川」と「人」 繋ぐ企画にメディアの責任痛感

「里山」の復興が注目を集めている。里山とは「集落の近くにあり、かつては薪炭用木材や山菜などを採取していた、人と関わりの深い森林」(大辞林)、総じて都市と自然の間にあって、人が利用してきた(いる)森林…という理解が一般的なようだ。
当地域でも先月、神石郡三和町の「サンワの森」花畑に近県の芸術作家らの作品を展示した青空美術展が開催され、二日間で千人も来場する賑わいを見せた。企画した福山の業者は有志を集め、手入れが行き届かず荒れていた花畑を生き返らせるため、八月下旬の残暑厳しい中、草を刈り、ごみを拾い、会場の整備を進めた。
事前にご連絡いただいており、告知記事を掲載したところ、新聞や地元メディアも取り上げ、当日は大盛況、企画者から心のこもった感謝のメールをいただいた。「里山」が媒介して「芸術」と「市民」が出会えたのも、里山とそれを復興させようとする力に秘められた、溢れんばかりの魅力が多くの人を惹きつけたから。本紙の紙面も媒体として水平な広がりで直接間接に人を集める手助けができたことは単純に嬉しい。
偶然にも同じ時期に、三原市の沼田川を手作りのいかだで下る、小学生の総合学習が行われた。観覧席となった川土手や遊歩道、橋の上に保護者のほか多くのやじうまが並んで普段と違う賑わいを見せた。いかだ下りを見守った観衆は約四百五十人。「川」が媒介となって「教育」と「地域住民」が自然に混ざり合う空間が提供され、「なんだなんだ」と集まってくるやじうまがさらに呼び水となって次のやじうまを呼び、歓声や笑い声を生んだ。その風景に、企画側も大きな可能性を見出したに違いない。
山にせよ川にせよ、造成や護岸工事で直線の多い人工的な景観に変化した。逆に全く人が入らず廃れつつある山村もある。それでもその地を愛する人たちがいる限り、見直そう、関わろうとする熱意が生まれ、新しい息吹が吹き込まれる。媒体は、その息吹を核に両者が出会える空間作りの一助となる。
それはもちろん「人」と「人」、あるいは「企業」と「企業」に置き換えても同様のことが言えるはず。息吹を伝える「紙」を媒体にその役目をまっとうし続けることは、当社に課せられた課題でもある。
「共生」をキーワードに手弁当でキラリと輝きを放った今回の二つの企画に触れたことが、ものごとの狭間に育つ息吹のスピードを速めたり拡大させたりする「媒体」の責任の大きさを改めて再認識するきっかけとなった。        (N)

潮待ちの間に新針路を

鞆港の空撮写真は美しい。円形の湾と包み込むような突堤は小船を守る自然の慈悲とさえ感じられる。しかしこの風景は永きに亘って荒波にもまれ、幾度となく崩れかけた。藤田雄山知事の英断もあって、一先ず波は静まったが、湾を守り、高齢化の進む港を守れなかったとあっては本末転倒。潮待ちの間に新しい針路開拓を期待したい。(J)

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