びんごトピックス  2003年12月20日号 

 表紙写真    


「因島杜仲茶」をセカンドグリッドが商品化

造船マンが育てた因島の杜仲茶が新たなステージに立った。
健康食品販売の(有)セカンドグリッド(尾道市栗原東1-1-6、資本金三百万円、溝口敏子社長、TEL0848・24・1965)から新しく「因島杜仲茶」として再デビューする形で商品化された。
日立造船バイオ事業部が因島で創始した杜仲茶は今年一月に大手製薬会社へ譲渡され、第一ステージを終えていた。しかし因島には日立造船OB社員を中心に三十八人の杜仲の木を育む生産者組合が残された。しかも大手製薬会社は他の仕入れ先を持っており、因島産の杜仲は行き場を失う危機に直面した。そこで創始時代から杜仲茶販売を推進した溝口義揮セカンドグリッド専務に白羽の矢が当たり、因島杜仲生産組合の杜仲茶を専門に販売する目的で「因島杜仲茶」が商品化された。
因島杜仲茶は三グラム入り三十パックで希望小売価格千五百円。現在では多種多様な商品が販売されている杜仲茶にあって差別化するため、真夏の太陽を浴びた緑の濃い葉だけを使用する贅沢な杜仲茶とし、価格は従来品並みとした。
緑の濃い杜仲だけを厳選使用した結果、因島杜仲茶は有効成分として注目されるゲニポシド酸が一パックに十五ミリグラムと最高水準の濃度となった。ゲニポシド酸は血流を助け血圧調整作用や抗ストレス作用が報告されている成分。杜仲茶にはそのほか内臓の活性化によりコレステロールを降下させるシリンガレジノールやミネラルが含まれ、健康増進のために愛飲する人が多い。
因島杜仲茶は原料確保が難しいため初年度は五千箱の限定生産。来年から二万五千箱以上の本格的生産となる見込みで、全国への販売体制づくりが進められている。


イオン本郷ショッピングセンター完成

イオン系の食品スーパー、マックスバリュ西日本(株)(姫路市北条口4丁目4、資本金十六億六千七百万円、原田昭彦社長)は、豊田郡本郷町大字下北方50-1、国道二号沿いに土地区画整理事業で造成した開発地に建設していた「イオン本郷ショッピングセンター」が完成し、十二月十二日オープンした。
十一月三十日には、イオングループが進めている自然環境の保全を目的とする「イオンふるさと森づくり」の植樹祭が開かれ、約二百人が参加し、二千本の苗木が敷地内の周囲に植樹された。敷地二万九千五百七十八平方m内には四棟の店舗棟、延べ床面積一万十五平方mのうち、ホームセンター、ナフコ棟の六千四十七平方mを除く三棟が完成した。核となるマックスバリュ本郷店は、延べ床面積三千百六十五平方m、売場面積二千三十三平方m、うち直営面積千九百八十二平方m、五十一平方mがインテナントのコインランドリー&クリーニング店舗。
岡橋慶直店長と八十人(正社員十一人、パート六十九人)を配置して年間売上高十五億円を目指す。営業時間は九時から二十四時、駐車場は五百六十一台を収容する。商圏人口は車で約五分、約四千五百世帯、約一万三千人とみている。
専門店棟は衣料品の「うえの」が延べ床面積六百二十九平方m、イオン系でセルフガソリンスタンド「ぺトラス」二百六十二平方m、百円均一の「セリア」が六百十一平方m、マックスバリュ本郷店横にイオンクレジットのCDとJA三原のATMコーナー(平日八時四十五分〜二十時、休日九時から二十時)がある。
ホームセンター・ナフコ本郷店は平屋建て六千四十七平方m、来年三月上旬オープンを目指して建設工事を進めている。イオン本郷ショッピングセンターの年商は四十億円を見込んでいる。
マックスバリュ西日本は、兵庫県内を主に岡山、広島、山口に多店化を進め、十二月中には本郷店のほか、広島市内に可部西店、姫路市内に宮西店を相次いでオープン、十二月十六日現在の店舗数百二十八店舗、うち広島県内二十一店舗を展開している。
平成十五年二月期では売上高千六百八十五億八千九百万円、経常利益四十四億八千五百万円、当期利益二十一億三千七百万円。食品が八九%を占める。


山陽KSCがプライバシーマークの認定

測量、地理情報システム運営などの(有)山陽ケーエスシー(笠岡市大井南53-7、資本金六百十万円、桑折義一社長、TEL0865・63・5521)は十二月九日付けで個人情報の適切な管理運営を行っている企業として財団法人情報処理開発協会から「プライバシーマーク」の認定を受けた。
情報管理業務のコンピュータ化を背景に個人情報漏洩の危険性が増大。プライバシーマーク制度は、その対応として経済産業省の外郭団体、財団法人情報処理開発協会(JIPDEC、東京都)が平成十年から運営を開始した。同マーク認定は、通商産業省の個人情報保護ガイドラインに準拠して個人情報の取り扱いを適切に行っているかどうかの判断基準となるとされ、情報処理業者や学習塾などで認定を受ける業者が増えている。九日現在で認定を受けている企業は全国で約六百五十社で、今後も増加が予想される。
山陽KSCは昨年九月、同社が参加する地理情報システム技術研究会で同制度を知り、情報処理業者としての差別化を図る一環として認定への取り組みを開始、十二月六日に「キックオフ宣言」した。まず「個人情報保護方針」として六カ条を定めた。内容は「個人情報取り扱いには管理責任者を置く」「業務処理を外部委託する場合は、個人情報紛失、漏洩、再提供のないよう契約書や覚書などで当社同様の管理を求める」など、個人情報の重要性を認識し適切な運用管理を推進することを文章化。
実践では、社内でのサーバー室の管理で、パスワードにより入室可能者と不可能者を分け、さらに入退室時のチェックを強化。またLANでつないだパソコンは、社員同士でも個人のフォルダには入れないよう情報の遮断を徹底。パソコンで提供する地理情報のデモデータも個人と特定できないよう加工する。書庫管理も見直すなど、情報の散逸を防ぐため、デジタル、アナログ両面から厳しいセキュリティをかけ個人情報管理体制を整えマニュアル化した。マニュアルは「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラム関連文書」と題したもので約二百五十ページ。「社内分権」「文書管理」「教育」「社内LAN管理」「人事情報」など約十項目の規定を定めている。
今年六月に申請、十月に現地調査を受け、十二月九日付けで認定。名刺や同社ホームページ(アドレス=http://www.s-ksc.co.jp/)などにマークを掲載し「個人情報を厳格に管理する企業として」PRしていく。桑折義一社長は「個人情報に関する社員の意識も変化した。これからも厳しいセキュリティを実践していきたい」と話している。


久富電機産業が携帯電話充電ラジオを全国展開へ

中学校向け技術教材製造などの久富電機産業(株)(福山市御幸町森脇989、資本金二千万円、水田実社長、TEL084・955・6889)は、技術教材として開発した携帯電話充電機能付きラジオを一般向け商品として販売するため改良、「楽天市場」へ出品すると同時に生活協同組合を販売先とするなど、ヒット商品づくりの体制を積極的に整えている。
携帯電話充電機能とライトの付いた「ダイナモ発電ラジオ」は、交流発電機と充電電池を搭載した防災グッズとして開発した教材用ラジオ。ラジオ、ライト、携帯電話充電機能の全てが、ハンドルを回すことで使用できるという特徴を持つ。また単三型の充電式電池も充電できる。
このほど、教材用の「RGE―1」を改良、LEDライトを既存の一・八倍の輝度に、また充電ではドコモのFOMAにも対応できるようにした。付属品も工夫し、地震による停電など非常時において、すぐにどこに置いたか分かるように、ラジオの収納袋に付けた同社の「HISATOMI」のロゴが発光する。価格は、本体と付属コード(ドコモ・ボーダフォン・ツーカー用、au用の二本)、収納袋がセットで通常価格五千五百円。大手ショッピングモール楽天市場では特別価格として四千九百八十円で販売する。FOMA専用コードは別売りで五百円。
さらに販路拡大に向け販売先を検討していた同社は、値崩れのしにくさや全国規模での展開をメリットとして生活協同組合での販売を決定。二月中にもカタログ掲載が始まり、地区ごとに順次商品をPRする。
教材の「RGE―1」はこれまでに数万台を出荷しており、一般向けに改良した「RGE―2」も同規模の出荷を予想している。またテレビショッピングなどでの販売も検討中。来年二月中旬に東京ビッグサイトで開かれるギフト商品の展示会「ギフトショー・春2004」にも出展するため準備を進めている。
同社の水田実社長は「大阪であった技術の先生相手の講習会でも、先生方から大きな評価をいただいた製品。一般消費者にも喜んでもらえるヒット商品に育てたい」と話している。同ラジオとその実験ボードの仕組みは技術教育を支援する諸団体や専門家からも大きく評価されており、このたび誠文堂新光社(東京都)が発行する「子供の科学」一月号にも掲載されている。



こぼれ話  2003年12月20日号

個々が芸術文化を磨けば 勝つための産業が芽吹く

今年を表す漢字は「虎」。阪神タイガースの奇跡は星野監督の「勝つための野球」を実証してみせた。経営者もその采配ぶりに驚かされた。
尾道では教育者。教育指導者の采配で大きく改革が動くことが実証され、同時に病根の根の深さに驚かされた。イラクで失われた尊い命に平和を守る代償の大きさを思い知らされた日本国民。尾道でも代償の大きさを思い知らされた。重要なことは平和ボケしないこと。白蟻に食われる柱のごとく少しずつ平和が崩れていることに気付かされた。
世の中は少しずつ変化し、全体の三割ぐらいになったとき、どんと変化するもの。そういう目で見ると今は小さな出来事だが、やがて大きな流れになりそうなこともあった。その中心的な役割りを果たしたのは文化だろう。今年は文化での変化が地域に根差し始めたように感じる。
一つはNPO法人。NPO法人という言葉もやっと親しまれるようになった。しかしどこまでボランティアなのか。資金不足に悩むNPOが多い。もっと企業や個人が寄付しやすいよう税制とセットで動くような社会にならないとNPO貧乏が続出しかねない。当地域では実例を知らないが、全国にはNPOをお金儲けの隠れ蓑とする例もあるからまだまだ混乱期に違いない。
そうした中で尾道では工房おのみち帆布と尾道てごう座がNPO法人として認証された。ともに芸術・文化を指向する組織で女性理事長。尾道の歴史資源を生かそうとする点も共通している。NPOとして利益を生み出す(まちにお金が落ちる)仕組みに挑戦している。
尾道帆布は自然素材の見直しを訴求したものづくり。柿渋で染めたバッグなどは新しい高級感から人気がじわじわと上がっている。取扱い店や製作者に利益が回る仕組みに期待がかかる。
尾道てごう座は演劇を中心にした文化の掘り起こしを進めており、観光産業の活性化に期待がかかる。かつて芝居小屋が軒を連ね、遠方からも客を集めたという尾道だが現在は映画館一つない。それでもまだまだ演劇を支えた気質は残っており、芸術学部を持つ尾道大学の助っ人も多いと聞くから今のうちにそうした気質の引継ぎにも期待したい。
竹原では「たけはら憧憬の路」と題したイベントが評判だった。灯かりを使って町並みをアート、ほのぼのとした景観は心を動かした。サンワの森では花畑の会場でアート展、尾道の民家でもアート展があり、それぞれに話題となった。ただ観るだけのアートが体験型になり、観光にとって極めて有効なノウハウになることが実験、証明された年になった。
この冬はどのまちもイルミネーションが耀く。観光はお金をかけた施設にバスで出かけるだけでないことに気付き、住む人の心で客を呼び寄せる手法に気付いた感がある。
芸術・文化の面白さは工業製品と違い、作者の数だけ面白さがあること。個がしっかりした産業ならナショナルブランドにも中国製の価格にも対抗できる。観光に限らず、来年は芸術・文化が溶け込んだ「勝つための産業」が芽生えそうだ。(J)

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