びんごトピックス  2004年3月10日号 

表紙写真     


千年石油販売が無担保私募債3億円発行

石油卸、小売りの千年石油販売(株)(沼隈郡沼隈町大字常石665-2、資本金五千万円、神原秀忠社長)はこのほど、無担保私募債三億円を発行した。
私募債は広島銀行、中国銀行、商工中金の各行が一億円ずつ引き受けた。同社では売り上げ増加に向けた仕入資金として活用する予定。
千年石油販売は新日本石油を元売とする石油卸、小売り業者。県東部を中心に直営サービスステーション(SS)十九店、サブSS三十二店を持ち、平成十六年一月期では売上高百七十億円を見込む県内最大規模の石油販売チェーン。石油販売会社が淘汰させる中、前年対比四〇%増という驚異的な増収を達成した。
成長の基盤について千葉泰樹取締役は「社員教育」をあげる。洗車、タイヤ交換などのサービス提供にも全国共通のマニアルに加えて独自の社内試験制度を導入、商品知識とセールスとしての知識を総合的に持ち合わせた人材育成を行っている。
また広島市内ではセルフGSとコンビエンスストアの複合店が好調で多店化の検討も進めている。
従業員数は約百五十人。事務系を除き、ほぼ全員が危険物取扱者資格を取得している。


三谷海運一万トンケミカルタンカー

傭船業の三谷海運(株)(尾道市高須町5054、資本金一千万円、三谷秀明社長、TEL0848・46・1000)はこのほど、外航二隻目となるケミカルタンカー「BOW ASIA」が本格運航を始めた。
同船は全長百二十m、幅十八mのケミカルタンカーで、一月十五日に引渡しを受けた。ノルウェーの海運会社オドフェル社のオペレーションで、化学原料など九千八百トンを積載、中国や韓国、オーストラリアなどの三国間輸送にあたっている。
同社は昭和四十八年に創業、先代が内航ケミカルタンカーの傭船(船舶貸渡し業)からスタートし、現在は内航ケミカルタンカー二隻、外航バルクキャリヤ一隻と今回の外航ケミカルタンカーを加えた合計四隻を所有している。
ここ半年ほど外航の運賃が高騰しているが、新船の傭船契約は建造と同時の二年前から決まっており、現在の高騰は同社の利益と無関係。それもあって三谷社長は「中国の好況が原因といわれるが、いつまで続くかという見方は様々」と冷静に受け止めている。


ペアコムが「養生ハット」新シリーズ発売

産業用電子回路、電気部品製造などのペアコム(株)(福山市駅家町江良358、資本金一千万円、梨木健太郎社長、TEL084・976・7111)は、鉄板にドリルで穴あけ加工をする際に出る切粉の飛散を磁石を利用して防止するカバー「養生ハット」を製造、販売しているが、このほど加工対象の磁性の有無に関係なく切粉の飛散を防止できる「養生ハットTYPE2」を商品化、販売を開始した。
養生ハットは、精密機械回りなどの穴あけ加工の際、磁石を被せた麦藁帽子状のカバーに切粉を吸着させることで切粉飛散を防止するアイデア商品。同社では「鉄板でなくても使える養生ハットがほしい」との要望に応え、木や石膏ボード、アルミなど加工対象の特性に関わらず使用できる新商品として「TYPE2」を開発した。従来の「ハット」部分と、着脱式の「ハットロー」、ハットローをはめこむ輪の付いたプラスチック製のハンドルが一セット。右利きの場合、右手にドリルを持ち、左手では握ったハンドルで「ハット」を装着した「ハットロー」を押さえ、加工部に圧着させて使用する。切粉はハット内に入るため、効率のよい穴あけ加工が可能になる。
使用できるドリルの直径は八・五oまで。ハットローは三個組みで、ドリルの直径に合わせ穴あけ加工できる。ハットローだけでもばら売りする。またハンドルの後方には切り込みが入っており、ハットローのつまみを自由な角度で挟むことができるため、加工対象が天井向きにある場合でも使用できる。
地元を中心にこれまで約千個を出荷した、磁石を利用する従来の養生ハット(ハットと磁石)とセットになっており、用途が広がったとして好評を得ている。ホームセンターなどに売り込みを図る同社の梨木健太郎社長は「今後三カ月で一万個の販売を目指したい」と話している。
同社ホームページ(アドレス=http://www.peacom.co.jp/)では定価千二百八十円を特別価格九百八十円で販売している。


マリンテクノの46人が卒業

(財)尾道海技学院が運営する専修学校日本海洋技術専門学校(愛称=マリンテクノ、尾道市栗原東2丁目18-43、向井邦昭校長、TEL0848・37・0008)は四日、尾道市新浜一丁目の尾道国際ホテルで第十七回卒業式を行った(表紙写真参照)。
今年の卒業生は総合海洋技術学科二十人、総合舟艇技術学科十七人と専門海洋技術学科七人、海洋技術研究科二人の計四十六人。それぞれマリンスポーツの指導、船舶整備、クレーン操作、ダイビングインストラクター、フィッシングアドバイザーなどの資格・技術も身に付けた。
今回の卒業生の就職率は九〇%以上。全国のマリン業界に就職するほか、オーストラリア留学まで多様な進路を取る。
向井校長は「全寮制で培ったコミュニケーション能力や協調性はマリン業界の重要な戦力。誰もが経験できない本校でも経験があなただけの個性を育みました。世界に一つだけのオンリーワンの花を咲かせてください」と卒業生の門出を祝った。
同校は昭和六十一年四月に日本海洋技術専門学校として設立され、七百六十八人の卒業生が巣立っている。



こぼれ話  2004年3月10日号

送るも涙、答えるも涙 運命共同体卒業の結束

思いがけずカメラをハンカチに持ち替えての取材となった。本気で別離を嘆き、心からの感謝に涙する姿はすがすがしく、優しい心を持つ人間の真価を考えさせられた。
三月四日、尾道国際ホテルで開かれた専修学校日本海洋技術専門学校(マリンテクノ)の卒業式は本当に感動的だった。教職員の方も思わず目頭を抑え、教員冥利に尽きる感激を味わったに違いない。今年の卒業式は例年と少し趣を変え、卒業生が自分たちの声を素直に届けたいという申し出に応え、変則的ながら卒業生三人が並んでの答辞となった。
卒業生四十六人の一人ひとりに卒業証書と資格証書が向井邦昭校長から丁重に手渡され、式次第はつつがなく在校生の送辞となった。在校生代表は小橋祥子さん。「楽しいイベントもたくさんありましたが、思い出すのはさりげない日常の言葉ばかり」と右も左も分からない初めての寮生活を振り返ったが、優しく迎え入れてくれた先輩の言葉を思い出すと涙に声を詰まらせた。
続いて送辞を受けた卒業生の答辞。代表の新田義孝さん、宮澤洋光さん、菊池愛さんの三人が「近くで支えてくれた仲間たち、ありがとう」「この十七期生なら試練も乗り越えられる」「今日で寮生活も終わり。辛いこともある。互いにがんばりましょう」とそれぞれの思いを涙ながらに伝えたが、最後は大きな声で「ありがとうございました!」と教職員の並ぶ列に向かって深々と頭を下げた。
三月は卒業のシーズン。仲間との別離、お父さん、お母さんへのありがとう、そして恩師への感謝。学びの園を後にする涙にはいろいろな思いがあるが、マリンテクノの卒業生が流した涙には全寮制の学校ならではの思いも込められていた。
同校には寮生活も教育の一環というこだわりがあり、マリンテクノの学生たちは向東町の寮で全就学期間を過ごす。シーマンにとって船は運命共同体。高い技術、知識があっても自然の脅威の前ではやはり乗組員の結束がものをいう。しかしそれほど大事な結束も核家族が当り前になった世代には実感がない。そこで寮生活がシーマン育成に欠かせない実体験の場となっている。
結束の強さは同窓会にも表れており、毎年、東京モーターショーを機に開かれる同窓会には全国から卒業生が集まる。そして同窓会長の舘岡邦彦さんは平日の卒業式にもかかわらず、職場の協力を得て毎年、東京から駆けつけてくる。マリンテクノの卒業式は第十七回を迎え、同窓生は全国に七百六十八人を数える。
今年の東京モーターショーでは若干ながら販売船舶数が昨年を上回ったという声が聞かれるものの、マリン業界を取り巻く環境はまだまだ厳しい。その中にあってマリンテクノ卒業生の就職率は九〇%以上。今年就職しなかった卒業生三人は惚れ込んだ会社の求人待ちが理由で、例年一〇〇%に近い就職率を誇る。
全国に散らばる卒業生ネットワークは就職時も強みを発揮する。涙で固めた結束こそがここまで数字を引き上げ、優秀な人材を求める企業も技術以上に涙を流す人間性、真価を買っている。(J)

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